春になり暖かい日が続くようになって、梅、桜、花桃、藤と順に季節を彩る樹木の花が咲きます。いずれも一つ一つの花は小さいものの、華やかに咲き揃った色鮮やかな景色は絶好の撮影スポットとなります。
山里、公園、神社仏閣などで、花が咲き誇る景色を撮るときは青空を構図に入れたいところで、上の写真のように背が高い大きな木は上を向いて撮ることが多くなります。特に花見の人で混雑する場所では、人が入り込むのを避けるために上を向いて撮るしかないことがあります。
菅原神社の上のしだれ梅の写真は、もっと離れた位置から撮れなくて上を向いて撮っています。
掛川城をバックに掛川桜を写した上の写真のように、お城など高いものを背景に撮ると上向きに撮っても違和感は少ないでしょう。
甲賀市のうぐい川での上の写真は、人混みを避けるため朝早い時間帯に撮影しています。しかし朝は陽射しの向きによっては撮りにくく、左の写真のポスターにもなるベストの構図では東南東向きのきつい逆光となり、何枚撮っても気に入った色や質感は出ません。この反対向きの西北西向きの右の写真の方が、桜の色が暖かみがあり、空や草の色なども鮮やかで綺麗な写真になっています。
花を少し大きく写す場合は、やや逆光気味の方が良い写真が撮れることが多いのですが、全体の景色を撮るときは逆光がきついと無理があり、このうぐい川のような方角の場所では、人混みを避けるとしても、朝より午後の人が帰りかけた時間帯の方がむしろ良さそうです。
上の写真の寺尾ヶ原千本桜の桜並木も、道をどちら向きで撮るかによって色相やコントラストが異なり、この北向きの写真が雰囲気良く撮れています。なお、山の緑と青い空を背景に桜や梅を撮る鉄板の構図が気に入っています。
天気の良い日の撮影の時間帯は、正午をはさんで前後各2時間ぐらいの間が失敗が少なく、上の月ヶ瀬梅渓の写真は、正午に近い明るい日差しが白梅を照らして輝いており、こういう人が写りこむ心配のない構図は撮りやすいでしょう。
熊野の長藤の上の写真は、長藤の花房の長さを見せようと写しており、六尺フジ、九尺フジなど房が長いフジは長くなった頃に長いことが解るように撮りたいものです。
藤は自立した立ち木は珍しく藤棚に仕立ててあることが多いので、上の写真のように藤棚の中を撮ると、陽射しが入ってキラキラと輝く透明感のある花の写真が撮れることがあります。自然の光の輝きはイルミネーションよりも美しいと感じます。
桜の花をアップで撮るときも、上の写真のように、できれば天気の良い日に青空を背景に輝く花を撮りたいものです。
花桃の下の左の写真も、青空をバックに撮っていますが、やや暗いかもという印象を受けます。このように空が占める割合が高いなど明るい色ばかりの画面を写そうとすると、カメラの自動露出調整では明るすぎると判断して暗く写そうとするため、手動で露出をプラスに補正するなど工夫が必要です。
一方上の右の写真のように、背景がグリーンであれば露出は補正の必要がないことが多いでしょうが、背景がボケるようにカメラの設定や構図で気をつけたいところです。
筆者が写真を撮るときは、基本的には絞り優先の設定で、F値を固定してシャッタースピードとISO感度をAUTOにして撮影しています。さらにブラケティング機能を使って、ISO感度を±1/3段変化させた3枚の写真を撮って、より明るさ暗さに拘って気に入った写真を残そうとしています。
しかし空をバックに花を撮る場合は、露出を随分プラス補正しなければならないことが多く、撮る花と同じような距離にある空が占める割合が少ない仮の被写体でシャッターを半押しして露出を固定し、半押ししたままカメラを撮る花に向け直してシャッターを切るようにしています。要はピントだけではなく露出合わせの半押しを使うと便利です。
上の梅の写真は、もう少し背景がボケていた方が良いかもしれませんが、背景に空が入っていなくても花は陽射しを浴びて輝いており趣があります。
背景が日陰になっていて花に強い光が当たっていると、上の写真のように背景が暗転し黒くなることがあり、背景のことを気にしなくてもすみます。特に上の右の写真のように、被写体に逆光が当たる場合はラインライトまたはエッジライトともいわれる輪郭が浮かび上がる現象がおこり、この梅では花ビラに透過光も見られるものの蕊(シベ)が輝いています。
快晴の強い日差しは、人物を撮るような場合は眩しくて目を細めたり顔に影ができたりするので嫌われるかもしれませんが、花を撮る場合は少しぐらい影ができたとしても、上の写真のように生き生きと輝いているので好みです。
藤の上の写真のように多くの花が連なる構図では、レンズと個々の花との距離の差によって、全部の花にピントが合わず、ピントが合う花の範囲が限られることが普通です。
上の写真の桜の枝は、レンズからの距離を枝の元と先で等しくできない位置にあるので、上の上の写真は枝の先にある桜の花がボケており、上の下の写真は枝の元にある中央の桜の花がボケています。要はピントの合う範囲を確認して、どこにピントを合わせるかが重要です。
桜の花は、上の写真のように玉の形になっていることも多く、アップで撮る場合は中央の手前の花にピントを合わせることが多いでしょう。その場合はF値を大きくしたり必要以上に望遠側にしないようにして、ピントの合う範囲を広く(被写界深度を深く)したいものですが、それでも奥の淵のほうの花がボケることは止むを得ないことです。
上の写真は下呂市和佐にある苗代桜です。池の水面に映った逆さの桜がメインで、こういう鏡に映したような稀にある構図では、風が吹いて池に波が立つと乱れて絵にならず、落ち着くのを待って撮るしかないでしょう。
滋賀県の海津大崎で撮った上の桜の写真は、琵琶湖の湖面に伸びる桜の枝を入れて写しています。湖や川に伸びる枝を含めて撮る構図は、遠近感が出て絵になるのでよく使われています。
構図の基本テクニックの一つである額縁構図は、寺社で山門近くや建物内から紅葉を撮るときによく使われますが、上の写真は笠置山自然公園で桜を撮ったときに額縁構図を意識してみたものです。
長野県飯島町の千人塚公園で、アルプスの山を背景に城ヶ池のほとりで撮った上の写真は、主役である桜が額縁ですが、額縁構図のようなものです。
高遠城跡公園で、遠景にアルプスを入れてタカトオコヒガンザクラを撮った上の写真は、アルプスにピントと露出を合わせれば、もっと鮮明にアルプスの山を撮ることができますが、主役は桜ですので限界があります。
ブレない範囲で可能な限りF値を上げて、少しでも桜までの距離を撮って、いわゆるパンフォーカスで撮るしかないのでしょうが、ここも花見の人が多いので自由に撮れず難しいところです。
梅、桜、藤の品種について詳しくは、この「四季の花巡りガイド」の「花の人気品種の紹介」コーナーから梅、桜、藤の品種を選んで、また花の名所について詳しくは、この「四季の花巡りガイド」の「花の名所ガイド中部」から花の名所を選んで御覧ください。
なお、当サイトのブログである「季節のフォト花便り」も、2017年4月1日に公開スタートしましたので時々再訪いただければ幸いです。