日本の藤は、大きく分けて野田藤(ノダフジ)と山藤(ヤマフジ)の2つの系統があり、その主な違いはツルの巻き方と花房の長さで、ヤマフジ系はツルが左巻き反時計回りで花房が短い、ノダフジ系はツルが右巻き時計回りで花房が長いという特徴があります。
磐田市の熊野の長藤のフジは、ノダフジ系の六尺藤で花房は約150cmと、上の写真のように長く垂れ下がっています。
この熊野の長藤のフジの木は、六尺藤の原木となっており、同じ静岡県内の東光寺の長藤は、熊野の長藤の枝を譲り受けて育てたもの、またその子株が林泉寺の長藤となっており、各地の六尺藤のルーツとされています。
熊野の長藤の花の色は、上の写真のように紫色ですが、やや薄い紫とのことです。同じノダフジ系の九尺藤の方がより色が濃いようですが、濃淡の違いは言われてみればそうかもという程度です。
九尺藤は、豊田市の藤の回廊で上の写真を撮影しています。この九尺藤は、花房が長いものは200cmまでなるようですが、見頃の時期より早かったのでまだ短く、もっと日時が経てば長く垂れていくのでしょう。
長い藤棚を反対の向きから撮ると、陽射しの方角が変るため印象が変ります。
上の写真は、藤の回廊で撮った紫三尺で、もちろん三尺ですから少し短く、色はやや赤味の強い明るい紫色です。
上の写真は、豊田市の藤の回廊の南西端の入口にあるシロバナ藤です。ここのシロバナフジは咲くのが少し遅いのかまだ早かったという状況です。
藤はマメ科の植物で、ハギやエンドウなど他のマメ科の植物に多く見られる蝶形花(チョウケイカ)という蝶に似た形の花が咲きます。確かに、萩の花と大きさは違っても似た形をしており、野田藤系の最もポピュラーなナガフジは、上の写真のような色形が基本です。
藤の回廊で撮った上の写真は、左がシロバナフジ、右が紫三尺のアップの写真で、紫三尺はやや赤味が強い紫色で形は少し小ぶりでシャープなとがった感じがします。
南信州の豊丘村の泉龍院では、上の写真のように紫、白、桃の三色の藤の花が咲くことで知られています。
泉龍院のフジの上のアップの写真は、よく見かける普通の綺麗な白色と桃色の房が長いノダフジ系の園芸品種のようです。ノダフジ系で白色や桃色の花が咲く品種としては、白色はシロバナフジ系、桃色はアケボノフジ(曙藤)、アカバナフジ系が多いようですが、名前は確認できません。
上の桃色のフジは、左が長藤のある熊野記念公園、右が蓮花寺池公園で撮影した写真です。
上の桃色のフジは、左が藤の回廊、右が赤坂スポーツ公園で撮影した写真です。
前の写真も含めて4か所で撮った桃色のフジのうち、熊野記念公園のエントランスにあった桃色フジの見た目がやや太っちょに見える他は、光の当たり具合は違っても同じ種類のフジに見えます。
また、それぞれの名所でアチコチに桃色のフジがあって、種類の異なるフジもあったかもしれませんが、見た目では判らなかったので、今後は名札のあるフジを撮って調べたいと思っています。
上の写真は、大垣の赤坂スポーツ公園の藤棚です。この公園では平成28年度までの計画で再生事業を行っており、ちょうど写真の位置の公園中央部では、紅フジ、9尺フジ、白フジに植え替えられる予定です。
また赤坂スポーツ公園では、外周藤棚も含めて藤の種類も多く、上の写真のように少し色の薄い種類のフジも数多くありました。この公園のホームページで紹介されている品種を確認すると、上の左の写真は見た目では翼弁の先端に紅をさしたように色が残る白紅フジのようです。
上の写真は、藤枝市の蓮華寺池公園の藤棚で、この広い藤棚には長藤、口紅藤、黒竜藤、野藤が咲いており、下のアップの写真はこの口紅藤です。
この口紅藤は薄紅藤とも呼ばれますが、前の赤坂スポーツ公園の白紅フジも似ていて見た目では区別は付きません。
ヤマフジ系の藤は、もともとは関西より西に自生している花房の短い藤ですが、ヤマフジ系の園芸品種のカピタンフジ(花美短藤、加比丹藤)は全国各地にあるようで、蓮華寺池公園でも見かけました。
上の写真の左は紫カピタンフジ、右は白カピタンフジで、いずれも少しズングリしている感じがします。うち白カピタンフジは早咲きのようで、他のフジが見頃でも写真のように枯れて終わりがけです。
上の写真のように蓮花寺池公園では、広い池の周りのアチコチに藤棚が設けてあって多くの種類のフジが植栽されていますが、加えて藤祭りには愛好家が鉢を持ち寄っていて珍しい種類のフジも見ることができました。
藤の花の咲く4月下旬から5月上旬は、チューリップ、牡丹や杜若などの花も見頃と忙しい時期ですが、藤の名所も一つ二つは周りたいと思っています。そして見た目だけでは中々区別がつかない上に、いろいろな名前で呼ばれることがあるフジの品種を少しづつ覚えたいと思っています。
それぞれの藤の名所について詳しくは、この「四季の花巡りガイド」の「花の名所ガイド中部」の「藤の名所リスト」から藤の名所を選んで御覧ください。
なお、当サイトのブログである「季節のフォト花便り」も、2017年4月1日に公開スタートしましたので時々再訪いただければ幸いです。